──海に潜る女、潮に濡れる肌。
嫉妬も、愛も、欲望も──すべては波に呑まれる。
藤浦敦が描いた“海と女の情念譜”。
🎞 映画DATA
- 公開年:1982年7月9日
- 監督:藤浦敦
- 主演:渡辺良子/風間舞子/水月円/松原玲子/中川夕子/松川ナミ/萩尾なおみ/嵯峨美京子/藤ひろ子/鶴岡修
- 上映時間:67分
- シリーズ:──
- メーカー:にっかつロマンポルノ
- ジャンル:成人映画/ドラマ/漁村ロマン
- 配信品番:141nkt00576
- 黒猫品番:512
- 平均評価:★★★☆☆(3.0)
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※本レビューは成人向けフィクションを文化的・文学的視点から解説しています。
🐾 黒猫レビュー
【1】海と女──ロマンポルノが最も美しかった瞬間。
『くいこみ海女 乱れ貝』は、藤浦敦監督が手がけた晩年の漁村ロマン。 海と女という普遍のテーマを、エロスと郷愁のはざまで描く。 渡辺良子が演じる若き海女・帆奈美は、海のように優しく、同時に激しい。 男の裏切りと嫉妬の中で揺れる姿は、まさに昭和エロスの残照だ。
【2】嫉妬に燃える海女──“乱れ貝”の名に込めた哀しみ。
恋人・源太郎が東京帰りのホステス・由紀を連れ戻す──その瞬間、帆奈美の中で何かが壊れる。 藤浦敦は、彼女の怒りや悲しみを直接的な台詞ではなく、波と風と沈黙で表現する。 嫉妬と欲望の渦の中で、帆奈美は「乱れ貝」と化していく。 その生々しさは、官能というよりも“祈り”に近い。
【3】藤浦敦が見つめた“女の終着点”。
ロマンポルノの多くが女性を「快楽の器」として描く中で、藤浦敦は彼女を「感情の海」として描いた。 帆奈美は決して堕ちない。裏切られても、罰せられても、海へ戻る女として生き抜く。 海は彼女を責めず、包み込む。 ──この静かな余韻こそ、1980年代に入ってなおロマンポルノが持っていた“文学の力”である。
【4】ロマンポルノの終焉に漂う詩情。
1982年──それはロマンポルノが終わりに向かっていた時代。 だがこの映画は、その終焉を美しく飾る。 枯れた演出、抑えた照明、そして無言のラストカット。 帆奈美の瞳に映るのは、過ぎ去った昭和の海。 そこにこそ、“くいこみ海女”の名が持つ本当の意味がある。
黒猫のまねき「嫉妬とは、愛の最後の波である。」
エロスとは、潮のように引いては寄せる“記憶の力”である。
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