【日活ロマンポルノ】性盗ねずみ小僧(1972)|主演:小川節子

──義賊か、淫賊か。
曽根中生が“ねずみ小僧”に託したのは、正義でも浪漫でもない。
欲望と権力が交錯する江戸の夜を、濃密な官能詩として描く。

🎞 映画DATA

  • 公開年:1972年1月29日
  • 監督:曽根中生
  • 脚本:長谷川和彦
  • 主演:小川節子/牧恵子/高見由起/瀬戸ゆき/小森道子/五條博/森竜二/浜口竜哉
  • 上映時間:69分
  • メーカー:にっかつロマンポルノ
  • ジャンル:時代劇/ドラマ/成人映画
  • 配信品番:141nkt00642
  • 黒猫品番:013
  • 平均評価:★★★★☆(4.0)

🐾 黒猫レビュー

【1】曽根中生、“義賊伝説”をエロスで解体する。

『性盗ねずみ小僧』は、単なる官能時代劇ではない。 曽根中生監督が挑んだのは、“ねずみ小僧=庶民のヒーロー”という通俗神話の破壊だ。 この映画で描かれる次郎吉は、貧困と飢餓の果てに堕ちた人間であり、 義の仮面を被せられた犠牲者である。 快楽と暴力が渦巻く江戸の夜を、曽根は異様なまでに冷徹な視線で切り取る。

【2】長谷川和彦の脚本が生む、反骨のエネルギー。

脚本はのちに『太陽を盗んだ男』を手掛ける長谷川和彦。 すでにこの時点で、彼の筆には“権力への怒り”と“人間への哀惜”が共存している。 老中・水野忠邦に操られる義賊、 搾取される民衆、そして翻弄される愛。 官能の背後にある社会的皮肉が、作品を単なるポルノから“時代批評”へと昇華させている。

👁 この作品を確認する(FANZA)

【3】小川節子──エロスと悲劇の境界を歩む女。

主演の小川節子は、曽根作品の中でも特に印象的な存在だ。 彼女が演じるおみつは、ねずみ小僧の愛人であり、陰謀の駒でもある。 哀しみと色香を併せ持つその姿は、まさに“犠牲の女神”。 彼女の裸体は、権力に弄ばれた江戸の民衆そのものを象徴している。

【4】ロマンポルノが見せた“江戸の現代劇”。

この作品を観て驚くのは、1972年という時代において、 すでに“ポルノの先にある政治性”が提示されていることだ。 エロスは逃避ではなく、暴力の反射として描かれる。 ラスト、引き回される次郎吉の姿に観る者は思うだろう── 彼は性に堕ちたのではない、時代に奪われたのだと。


黒猫のまねき

「正義を奪われた男は、快楽でしか自分を取り戻せない。」

🎬 視聴案内
※配信状況は掲載時点。最新の視聴可否はリンク先でご確認ください。

ロマンポルノとは、国家に抗う肉体の物語である。

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黒猫のまねき

「また夜が来たら、ここで逢いましょう。」

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